奈良市富雄川沿い、細い道の入り口に建つ石標。
奈良県に住んで、神社の名前に付く「坐」という字は「います」と読むことを覚えました。
それでも、この神社の名前は読めない!
読み方を知りたくて興味を持ったこの神社で、ご朱印をいただいてきました。
添御県坐神社の読み方と通称
まずは読み方を。
「そうのみあがたにいますじんじゃ」。
添(そう)郡にある県にいらっしゃる神様の社、ということになります。
(境内の建つ看板などいろいろなところに読み方が書いてあります。)
地元の小学生が書いたポスターを見てもわかるように、地元では三碓(みつがらす)神社または添(そう)神社と呼ばれています。
末社のえべっさんのお祭りも有名なので、富雄の恵比寿神社と呼ぶ方もいます。
添御県坐神社のご朱印
初穂料は300円。
社務所で授与していただきます。
お札・お守りも社務所で授与してもらえます。
種類が多く、色もカラフル、デザインもかわいいものが多いですね。
拝殿に貼られていたお守りリストになったポスターです。
添御県坐神社の名前と歴史
県(あがた)とは律令制度以前に置かれた朝廷が直接支配する土地のこと。
添(そう)郡は大きかったので、のちに添上・添下のふたつに別れました。
添以外にも奈良には高市・葛木・十市・志貴・山辺の県があり、その名は現在も奈良県の地名として残っています。
この神社が古くから存在していたことがわかりますね。
参道を進んでくると石の鳥居のある神社の入り口です。
石の鳥居をくぐってから本殿のあるエリアまでもう少し参道が続きます。
車の場合はこの坂道を上がった左手に駐車場があります。
境内への階段は境内の西南角にあります。
お掃除が行き届いていて、小さいながらもまとまった境内です。
境内は10/15から2週連続で順延になっている例大祭の準備中でした。
拝殿
ガラス張りの拝殿が二つ並んでおり、その間に中門がある形。
中門から直接本殿を見ることができます。
本殿の前には石の鳥居があります。拝殿では祈祷を行ったり、お祭りの際には参列者席に。
本殿
南北朝時代の1383年に建てられ、重要文化財。柱と柱の間が5つ、内部も5部屋に分かれています。
神坐の間〈神様のお部屋〉には緑の格子戸と階段が付いています。
本殿は覆屋(おおいや)で保護されているので、保存状態が良いのが特徴。神社の建築で南北朝時代の建物は全国でも少ないそうです。
(左側から見た本殿。木の枠や塀のように見える部分が覆い屋。)
本殿に向かって右側から建速須佐男之命(たけはやすさのおのみこと)・武乳速之命(たけちばやのみこと)・櫛稲田姫之命(くしなだひめのみこと)がまつられています。
(千鳥破風のアップ。千鳥破風は3つある緑の格子戸それぞれに付いた屋根ようなもの。)
舞台
神楽の奉納やお祭りで太鼓を奉納するなど催しものをする際に使われます。拝殿の真向かいに建っています。
英霊殿
この地域から太平洋戦争などの戦場に出られて戦没された方々がまつられています。毎年4/10に英霊祭を行い、戦没者の安眠をお祈りしています。
末社
境内には4つの末社があります。こちらの神社では本殿にならってか、どの末社もお社に立派な覆い屋が付いています。
福神宮
奈良時代にこの地域を治めていた豪族・小野福麿公がまつられています。
ご利益がありそうなお名前ですね。
九ノ明神
福麿公と関わりのある村人9人がまつられています。小さなお社ですがとても精巧にできていて思わず見入ってしまいました。
恵美須神社
商売繁盛や招福で信仰を集める恵美須様です。毎年2/3の節分の日に例祭が行われます。奈良市内で商売をされている方にはよく知られていて、多くの方々でにぎわいます。
天之香具山神社
かつてはこの付近で良質の陶器を作るための土が採られたことにちなむ社と考えられています。
*大和三山として知られる天の香久山は神器を作る陶土が採れることで知られています。
龍王神社
雨乞いにご利益のある龍神をまつっています。
根聖院(こんしょういん)
神社の駐車場の奥にお寺があります。
古い時代にはお寺が神社の管理をする、またその逆もありました。
根聖院は添御県坐神社の別当寺、つまり管理をするお寺だったそうです。
ここに住所地である三碓(みつがらす)の名前の秘密があります。
こじんまりとしたお寺です。
奈良時代、この地を治めていた小野福麿は、三ツ碓(からうす)を置いて米をひかせていました。
この地に鳥狩りに来ていた聖武天皇がそれを見て当地を「三碓」(みつがらす)と名付けたのだそうです。
添御県坐神社について
【正式名】添御県坐神社(そうのみあがたにいますじんじゃ)
【ご祭神】
- 建速須佐男之命(たけはやすさのおのみこと)
- 武乳速之命(たけちばやのみこと)
- 櫛稲田姫之命(くしなだひめのみこと)
*地元の口伝として、武乳速之命はこの一帯を開発し治めていた首長の那賀須泥彦(ながすねひこ)のこととされています。
【創建】はっきりと書物に名前が出てくるのは平安時代。口伝によると古墳時代ごろ。
【主な建物】本殿 重要文化財
五間社流造(ごけんしゃながれづくり)・檜皮葺の屋根・千鳥破風付き。
*1966年の解体修理で殿内より墨書きが発見され、1383年11月に建てられたことが判明。また、1513・1665・1820年に大修理が行われたこともわかっています。2010年の塗装修復工事で造営当初の色彩に復元しました。
【参拝時間】 境内拝観自由
【授与所の受付時間】9時から17時まで(ご祈祷の受付は16時まで)
アクセス方法
【電車】
- 近鉄奈良線「富雄」駅より徒歩15分。
- 近鉄奈良線「富雄」駅より奈良交通バス「三碓」下車。徒歩3分。
- 近鉄奈良線「学園前」駅より奈良交通バス「学園大和町5丁目」下車。徒歩3分。
【車】石の鳥居を入って80m先左手に参拝者用駐車場あり。無料。
*年末年始・2/3(恵美須大祭)・10月の第三日曜(例大祭)は利用できないので注意。
おわりに
添御県坐神社は、前面にはすぐ拝殿、周囲には覆屋があって写真では伝えにくいのですが、本殿はとても麗しくて一見の価値ありです!
また個人的にはドールハウスのような九ノ明神のお社がおすすめ。
ぜひ実物をご覧ください。